少年が気が付いた時には、ユーはすっかり満腹になって眠ってしまっていました。 |
「お花畑?あぁ、あの丘を越えると見えるわよ。今の季節はとてもキレイよ」 |
少年の背中に揺られているうちにユーは目を覚ましました。 「あれ・・・?」 |
「わあ!!お花畑だ!!きれいなきれいなお花畑だ!!」 |
ユーはただじっとお花畑を見つめていました。 少年もその横でその様子を見守っていました。 |
しばらく経ってからマーサが声を張り上げてやってきました。 「あぁユージーン様!こんなところに!皆さんこちらですこちらにいらっしゃいましたよ!!」 |
「ありがとうございました。おかげでお花畑まで来ることができました」 ユーが丁寧にお辞儀をすると、少年は何も言わずに頭をポリポリと掻きました。 |
「ユージーン様!黙って家を抜け出すなんて!マーサがどれほど心配したか!旦那様に厳しく叱っていただきますからね!!」 マーサは凄い剣幕でユーの腕をグイグイ引っ張って行きました。 少年はその場に静かに、ユーが見えなくなるまで佇んでいました。 |
ユーはその日はいつもより早めに寝床に付きました。 「さぁてユージーン様、今日はもうお疲れでしょう。一体何をしたか覚えておいでですか」 「ごめんなさい。お花が見たかったの。もうしません。」 ユーがそう言うとマーサは「おやすみなさいませ」と言って火を消して部屋を出ていきました。 |
「ごめんねマーサ、ユーはほんとは母様にお会いしたかったの。ユーは強くなりますって言ってきたんだよ」 それは誰にも内緒のユーだけの秘密でした。 ユーは眠りに入りながらその時の事を思い出していました。 「そういえばあの子、誰なんだろう・・・また会えるのかな」 名前も知らないのに、でもいつか会えそうな気がして、とても嬉しい気持ちになったユーでした。 |