■ユーの秘密(2)■





少年が気が付いた時には、ユーはすっかり満腹になって眠ってしまっていました。






「お花畑?あぁ、あの丘を越えると見えるわよ。今の季節はとてもキレイよ」






少年の背中に揺られているうちにユーは目を覚ましました。
「あれ・・・?」






「わあ!!お花畑だ!!きれいなきれいなお花畑だ!!」






ユーはただじっとお花畑を見つめていました。
少年もその横でその様子を見守っていました。






しばらく経ってからマーサが声を張り上げてやってきました。

「あぁユージーン様!こんなところに!皆さんこちらですこちらにいらっしゃいましたよ!!」




「ありがとうございました。おかげでお花畑まで来ることができました」

ユーが丁寧にお辞儀をすると、少年は何も言わずに頭をポリポリと掻きました。




「ユージーン様!黙って家を抜け出すなんて!マーサがどれほど心配したか!旦那様に厳しく叱っていただきますからね!!」

マーサは凄い剣幕でユーの腕をグイグイ引っ張って行きました。
少年はその場に静かに、ユーが見えなくなるまで佇んでいました。



ユーはその日はいつもより早めに寝床に付きました。
「さぁてユージーン様、今日はもうお疲れでしょう。一体何をしたか覚えておいでですか」

「ごめんなさい。お花が見たかったの。もうしません。」
ユーがそう言うとマーサは「おやすみなさいませ」と言って火を消して部屋を出ていきました。


「ごめんねマーサ、ユーはほんとは母様にお会いしたかったの。ユーは強くなりますって言ってきたんだよ」

それは誰にも内緒のユーだけの秘密でした。
ユーは眠りに入りながらその時の事を思い出していました。

「そういえばあの子、誰なんだろう・・・また会えるのかな」
名前も知らないのに、でもいつか会えそうな気がして、とても嬉しい気持ちになったユーでした。

おしまい。
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